コロナ禍による隔たり

コロナ禍にあって、視覚や聴覚に障がいを持つ人々が困っているというTVの報道を目にしました。視覚に障がいを持つ人にとっては街の人出が減ることにより、耳から来る情報がかなり少なくなったそうです。お店の前を通って、そこから聞こえる人の動きや券売機などの音を聞き、今どこにいるかを把握していたそうですが、そのような日常の音がコロナによって減ってしまい、外を歩くのが難しくなったと聞きました。また聴覚に障がいがある人にとっては人々がマスクをつけることで、口の動きを見ることができなくなり、相手の言葉を理解しづらくなっているそうです。特に口の動きで言葉を読み取る訓練をしている子どもたちにとっては、深刻な問題です。

重い障がいを持つ長男が先日2週間ほど大学病院に入院しましたが、今は面会禁止で病室に入ることはできませんでした。体を自由に動かせず言葉で意思を伝えることができない長男が、慣れない環境でどうしているのか大変気がかりでした。新型コロナウイルスの感染防止のための面会禁止とはいえ、意思を伝えられない子どものそばに行けないという状況は、親にとってとても辛いものだと身にしみました。コロナ禍によるとてつもない隔たりを感じた時間でした。

退院の日、病棟内のデイルームで待っていると、窓から電車が通るのが見えました。ちょうど5階の病棟から目の高さくらいに高架線があり、こんな近くを通っているのだと気がつきました。防音になっているらしくあまり音は聞こえないのですが、耳を澄ますと電車の音が聞こえてきました。子どものいた病室はデイルームの並びですから、また窓際のベッドだと主治医の先生から聞いていたので、電車の音を聞いていたかもしれません。今は気管切開をしていて声は出せませんが、長男は子どもの頃から耳に入ってくる音に反応して笑い声をあげることがありました。台所から聞こえてくる野菜を切る音や、あわてた足音が聞こえて急に笑い出すこともあり、きっと、身の回りの音や話し声の音色や響きを楽しんでいるんだなと思っていました。小さい頃から乗り物が大好きでしたから、今回の入院中、電車と電車がすれ違う音、単独で通り過ぎる音、駅を出て加速する音など、様々な電車の音が聞こえたことは嬉しかったかもしれないと想像しました。

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