心に残った3冊の絵本

昨年出会った心に残った絵本を紹介します。この絵本はどれも何かしらの困難を抱える当事者の思いを伝えているものです。

『心をひらいて、音をかんじて』 耳のきこえない打楽器奏者 エヴェリン・グレニー

シャノン・ストッカー 文 デヴォン・ホルズワース 絵 中野怜奈 訳 (光村教育図書)

音が聞こえなくても、音を感じることができるのだということが伝わってきます。音楽や自然に囲まれて育ったエヴェリンは、音のふるえを体全体で感じることができます。そしてオーケストラのようにあらゆる音を生み出せるようになったのです。2012年のロンドンオリンピック開会式でもその演奏が披露されました。

『ぼくは川のように話す

ジョーダン・スコット 文 シドニー・スミス 絵 原田勝 訳 (偕成社)

作者はカナダの詩人で、吃音があります。うまく話せなかった日の学校の帰り、父親が川のほとりで「おまえは、川のように話しているんだ」と語り掛けます。

私たちは自然の中に包まれている小さな人間にすぎないと思えてきます。一人一人が形は違っても困難を抱えていて、それと共に折り合って生きていく方法があるのかもしれないと、背中をそっと押されるような気がしました。

『二平方メートルの世界で

前田海音 文 はた こうしろう 絵(小学館)

以前にEテレで作者の前田海音(みおん)さんが紹介されていたのを見たのがきっかけで、読んでみたいと手にとりました。この絵本は海音さんが小学3年生のときに書いた作文を元に作られました。海音さんは神経の病気で小さい頃から入退院を繰り返しています。病院で過ごしていたある日、偶然のことから以前に入院していた子どもたちのメッセージに気がつきます。

私の長男も病院にいるときはどのような気持ちだったのかなと今でも考えることがあります。海音さんがその経験を言葉にし、絵本という形になったことが素晴らしいと思います。

一人で闘っているような気がして孤独だと感じることがありますが、一人ではないと思えたとき、私たちは大きな力を得られるのかもしれません。

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