カミユ「ペスト」を読んで

 以前から読みたいと思っていたものの、読めていなかった本の一つがカミユの「ペスト」でした。2020年世界にパンデミックを引き起こした新型コロナウイルスの出現があり、読むなら今と思い立ってアマゾンで購入し、「ペスト」を読み始めました。

 この本は私にとってこれまで読んだ中でもナンバー1と言っていいほど感銘を受けました。ある日、ある港町に現れたペスト。ペストと闘う医師リウーやその周りの人々が軸となって物語は展開します。

 読んでいてとりわけ胸がしめつけつけられたシーンがあります。ひとつはオトン判事の幼い息子がペストにかかり、血清を注入されながらも苦しむ場面。ここは長男の最初の闘病の頃、当時2歳8か月でしたが、命の火が何度も消えかかりながらも生きてくれたあの時の記憶がよみがえってきました。そしてもう一つは、保健班としてリウーと共にペストとの闘いを続けたタルーが最後に自身もペストに侵されてしまうところです。ここを読んだときは、長男の2度目の厳しかった病気との闘いを思い出しました。長男は入院中に20歳の誕生日を迎えました。

 特に心に響いたのは物語の最後の方のシーンです。ペストが去った後、その地に残ったリウーの描写です。病が去ったとしても、すっかり元に戻るわけではないということ、それが痛いほど伝わりました。

 自分ではどうすることもできない様々な不可抗力の出来事に何度も直面することがあるでしょう。それでも、人は生きていけるのだと。悲しみをかかえて、進むことができると。そこから何かを見つけることができるのだと。そんな静かな勇気を与えてくれます。     

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